来世はアメーバがいい

ホモサピエンス、難易度が高すぎて困っちゃう

二次元嫁を推して3年。ここにきて推しが「死んでもいい」と思っていることを知り、映画館で号泣。

※映画スパイダーマン:スパイダーバースの、スパイダーグウェンに纏わる感想です。ネタバレするのでご注意ください。
 
 
涙腺は強い方ではないですが弱い方でもないタイプで、わりとごく普通です。哀しい話では泣いちゃうけど、感動的な話で泣くことはあんまりない、みたいな。
推しの出る映画、哀しい話ではなくて、感動作に仕上げてくれていたんですけれど、私は映画館で哀しみの号泣をしていました。推しのくだりがめちゃくちゃしんどくて。これコミックス読んでいる人しか分からないと思うけれど、コミックス読んでいる人には突き刺さる描写でした。
 
私の推しのスパイダーグウェンは、殺されたスパイダーマンの恋人グウェン・ステイシーが、もしスパイダーマンの能力を手に入れていたら…?というIF設定から派生したキャラクターです。スパイダーグウェンの世界では、蜘蛛に噛まれて特殊能力を得たのはグウェンの方で、ピーターは凡人のまま。そしてこの世界の二人は幼馴染の親友*1で、恋人ではありません。*2
で、スパイダーグウェンのオリジン*3なんですが、端的に言うと「親友殺し」です。
 
スパイダーグウェンは自分の世界で「スパイダーウーマン」として活躍していて、TV出演もやる人気ヴィジランテだったんですけど、ピーターはそんな彼女に憧れて自分もスパイダーウーマンみたいな特別な存在になりたい!とスーパーパワーを手に入れる薬を開発しちゃう。で、失敗してリザードというトカゲの化け物になります。そしてスパイダーウーマンことスパイダーグウェンに倒され、死亡。死の間際に変身が解け、グウェンはそこで初めて自分が殺したのが親友ピーターだったと知るわけです。
重い!!!!!!!死ぬほど重いオリジンですよ。こんなに重いオリジンを持っているのは本当にスパイディの中でも珍しい。助けられなかったわけでも見捨てたわけでもなく、自分で殺しちゃったんですよ…。
更に重いのが、ピーターが特別な存在になりたいと願ったのは、高校で虐められていて、クラスメイト達を見返したいという気持ちがあったから。グウェンはいつもピーターを庇って守っていたんですが、おそらくそれに対するコンプレックスもあったみたいなんですよね。というのも、ピーターがグウェンに惚れているともとれる描写があって。好きな女の子に庇われているふがいない自分に対する憤りもあったんだと思う。そして禁断の薬を開発してしまい、怪物になってしまった。
更にさらに、グウェンはリザードをいたぶって殺しているんですよ。リザードは「放っておいてくれ」と命乞いともとれる台詞を言って逃げようとするんですが、それを許さず、死ぬまで痛めつけた。これはリザードがグウェンの通う学校で暴れ、グウェンは友人たちを傷つけられたことに激高した…というのがひとつ、グウェン自身がスパイダーウーマンという存在に寄せられる過剰な期待にまだ戸惑っていて、フラストレーションを抱えていたというのがひとつ。故意に殺す気はなかったみたいなので、おそらくピーターの薬が不完全で、よりダメージを食らったというのもあるんじゃないかなと思います。もしくは薬の副作用とかもあったかもしれない。けれどいずれにせよ、グウェンが自分の苛立ちをリザードにぶつけ、手酷く攻撃したことは事実です。
ピーターはグウェンという存在に影響されてリザードと化し、そのグウェン自身によってうち滅ぼされる。様々な要因全てにグウェンが関わっていて、マジでグウェンがいなければピーターは死ななかったと言える構成です。
地獄みたいな話じゃないですか???私は地獄だと思っています。
 
というわけで私の推しは地獄に生まれて地獄を背負って生きているヒーローなんですが、なんと映画でもコミックスと同じ設定だったんですよ。
今回推しは主人公ではなく、メインキャラの一人という扱いで、背景についてはさらっと語られるだけでした。でも、推しがリザードを蹴り飛ばした瞬間にリザードの輪郭が人間の形になるシーンが挿入され、次に推しが上半身裸のピーター*4を抱きしめるカットになり、「親友のピーターを失った」的な台詞が入ります。
コミックスを読んでいない人にとっては???なシーンだと思いますがコミックスを読んでる人は「あ”――――っ」ってなると思う。私はなりました。コミックスと同じだ…やつは地獄を…地獄を背負っておる…!ヘルをキャリーする女…ヘルキャリーグウェンじゃ!ごめんちょっと無理があったね。ヘルシェイク矢野が好きなんです。
 
もうこの時点でコミックスのあれこれが思い出されて涙腺ゆるゆるなんですけれども、ラストバトルでトドメがきた。
こういう映画ではおなじみの「誰か一人が犠牲になって死ななきゃいけない」っていう展開があります。犠牲になるのはメインキャラのひとりであり主人公マイルスくんの師匠役でもある元祖ピーター・パーカー。今回の映画ではさえない中年として登場します。でまあ、定説通り中年ピーターが「俺が犠牲になって世界を救うぜ」ってカッコよく決めるんですが、どたんばで調子を崩しちゃうのね。その時、よろめいたピーターをグウェンが支えて、「ピーター、私が代わろう。私なら出来る」って言うの。
……代わったら君は死ぬんですけど!?!?!?!?!?!?
I can do itってなに!?!?!?!?!?!?
死ぬ覚悟は出来てるってことかーーーーーーー!!!!
そんな若い身空で、死んでもいいってことかーーーーーー!!!!
衝撃でした。この子死んでもいいって思ってるんだ、と分かった時、ドッパァって涙出てきた。あやうく映画館で声を上げてしまうところだったあぶなかった!
2回目の鑑賞でこのセリフの真意に気づいたんだけど*5、1回見てるからハンカチの用意してなかったんですよね。いつもなら鞄に入れてるんだけどその日たまたま忘れちゃって。でも1回見てるし必要ないでしょって油断してた。それが過ちでした。ボロボロ流れる涙をぬぐうものがなくて、つけていたマスクがびしょびしょになった。気持ち悪かった…。
 
推しを推して3年経つけれど、コミックスでは推しはどんな時も立ち上がって歩き続けていたから、背負った地獄も昇華されているのかなと思っていたんだ。けどこれは違いますね。この子は一生地獄を背負っていくんだ。マーベルはこの子から地獄を取り除くつもりはないんだなって。
コミックスにおいて推しは、ヒーローを続ける理由を「死んだピーターが憧れたヒーローであり続けることが彼への贖罪」だと述べてるんですね。あのセリフと今回の映画での発言を考えると、グウェンの、グウェン自身としての人生はもう捨て去られているんですよ。あの子はピーターを殺してしまった時点で、本当の意味で自分の人生を捨てちゃったんだなって。だから、ヒーローとしての意義のある死を迎えられるなら、生を終わらせても構わないと本気で思っているんだろうと。
泣くわ。
しかもね、3回目の鑑賞で気づいたんだけれど、グウェンが妙に中年ピーターに優しいのね。なんでだろ?と思ってたんだけど、これはあれですね、この子「もう二度と目の前でピーターを失いたくない」って思ってるんだ。グウェンにとって中年ピーターは自分が殺した未来そのものなんだよね。自分の世界のピーターを殺したのは自分なんだもの。
中年ピーターに犠牲役を代わると言ったのも、死んでもいいという気持ちプラス、自分のピーターの代わりにはならないけれど、せめてこのピーターを救えたらという気持ちがあったんじゃないかって。
泣くわ…。
ただ映画では救いが描かれてて、ピーターの件で心を閉ざしたグウェンは「友達を作らない」ことをポリシーにしちゃうんだけど、なんやかんやでマイルスくんがグウェンちゃんの友達になってくれるんです。ラスト、右手を差し出して「Friends?」と訊いたマイルスくんの手を取って、グウェンちゃんが「Friends.」と微笑むシーンは誠に、まことに良かった……。映画はマイルスくんの成長物語であるとともに、マイルスくんがグウェンちゃんを救う物語でもあるのだ。
コミックスではグウェンちゃんにはガールズバンドのメンバー達がいて心の支えになってるので、友達なんていらないというポリシーではないんだけれど、今後の展開によってはいつかそうなるかもしれません。なぜならスパイダーマンというヒーローは悲劇がアイデンティティなので、身近な人がバンバン死ぬからです。やめて…これ以上推しから幸せを奪わないで…。
ちなみにコミックスでもマイルスくんとグウェンちゃんはくっつきます。二人の淡いラブストーリーを描いたコミックスもありまして、控えめに言って最高オブ最高なコミックスなんでこの二人にビビッときた人にはぜひ読んでほしい。
いやもう映画といいコミックスといい私は本当にマイルスくんに頭が上がらない……この子がいてくれるからまだ救いがあるんだ……ありがとう、本当に感謝していますが今しばらくは清い交際でお願いします。
 
でもいずれにせよ私の推しがものすごく哀しい運命を背負った人であることに変わりはないんだよな。
映画館でぼろぼろ泣きながら、なんて哀しいキャラクターを嫁に貰ってしまったんだ…とちょっと呆然としていた。
正直、推しは外見でひと目惚れだったんですよね。そこからコミックスを読んで性格にさらに惚れたという感じなんだけれども、そもそもあそこまで外見に強烈に惚れ込んでいなければコミックスに手を出さなかったと思うので*6、本当にどうしてよりによってこんな悲劇的なキャラクターの沼に落ちてしまったんだ私……出会わなければ!こんな思いをすることもなかった!!!!!!!
 
 

*1:家が隣同士

*2:時々「恋人だ」と紹介している日本語サイトがありますが、原作にそのような表現はなく、英語表記だとClassmateかBest friendの紹介が多いです。今回の映画でも、二人は親友という設定でした。

*3:アメコミヒーローの誕生秘話をオリジンといいます。これは能力を得る過程、そしてヒーローとして生きる決意を固めるまでの流れを指します。

*4:体に鱗の跡があることからも確実にリザードです

*5:1回目はただただ映像に圧倒されていた

*6:だって原書だよ英語だよ!?そんなホイホイ読めるかい!